2025年6月4日に、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を雇用主に義務付ける法律が成立しました。この法律は、労働施策総合推進法を改正し、カスハラ対策を事業主の「雇用管理上の措置義務」とするものです。カスハラ(カスタマーハラスメント)対策の義務化は、医療機関を含む全ての事業者に適用されます。クリニックにおいては、患者からの理不尽な言動や要求から従業員を守るため、具体的な対策を講じる必要があります。
具体的にクリニックが取るべき対策は以下の通りです:
- カスハラ対策マニュアルの作成:
カスハラ行為の定義、具体的な事例、対応方法などを明記したマニュアルを作成します。
マニュアルには、暴言、暴力、威嚇、居座り、リピート型クレームなど、様々なカスハラ行為に対する対応方法を記載します。
患者への説明責任を果たすための説明方法や、録音・記録の方法なども盛り込みます。
患者の言動を記録する際は、いつ、どのような状況で、どのような対応をしたかを詳細に記録します。
- 研修の実施:
カスハラに関する認識を深め、適切な対応を学ぶための研修を定期的に実施します。
マニュアルの内容を理解させ、ロールプレイングなどを通して実践的なスキルを習得させます。
特に、受付・看護師など、患者と直接接する機会の多い従業員への研修を重点的に行います。
- 相談窓口の設置:
カスハラ被害を受けた従業員が相談できる窓口を設置します。
相談窓口は、社内の人間だけでなく、外部の専門機関(弁護士、カウンセラーなど)に委託することも有効です。
相談しやすい環境を整え、従業員が安心して相談できる体制を構築します。
- 安全確保措置:
カスハラ行為がエスカレートした場合、従業員の安全を確保するための措置を講じます。
複数名で対応する、警備員を配置する、警察に通報するなど、状況に応じた対応を事前に検討しておきます。
必要に応じて、患者への診療を拒否する判断も検討します。
- 法的措置の検討:
暴行、脅迫、名誉毀損など、犯罪行為に該当するカスハラ行為については、警察への相談や法的措置を検討します。
患者の言動を記録し、証拠を保全しておきます。
- 再発防止策の実施:
カスハラ発生時の情報を共有し、原因を分析して再発防止策を講じます。
従業員の接客態度を改善するための研修や指導を行います。
患者への説明を徹底し、誤解や不満を生まないように努めます。
医療機関特有の注意点:
医療機関は、患者の生命・身体の安全を守る義務があり、患者からの要求にどこまで応じるかの判断が難しい場合があります。
患者の言動が、精神疾患や認知症によるものかもしれないという配慮も必要です。
患者の言動を記録する際は、プライバシーに配慮し、個人情報保護法を遵守する必要があります。
まとめ
患者への説明責任を果たすために、十分な説明を行い、記録を残すことが重要です。
これらの対策を講じることで、医療機関は、従業員が安心して働ける環境を整備し、患者へのより質の高い医療サービスを提供することができます。