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医院開業コラム

クリニックにおける2024年診療報酬改定のポイント

診療報酬改定は2年に1度おこなわれますが、年々診療報酬改定は複雑かつ非常に分かりづらくなっております。

今回は2024年度の診療報酬改定のポイントについて述べさせて頂きます。

 

1.医療従事者賃上げの対応

①物価高騰に伴う職員の賃上げに対応として、初診料を3点、再診料をそれぞれ2点引き上げられます。

②外来医療または在宅医療を実施している医療機関は、勤務する看護師など医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価として外来・在宅ベースアップ評価料が新設され、初診時に6点、再診時に2点、訪問診療時の同一建物居住者以外の場合は28点、同一建物居住者の場合は7点です。

またベースアップ評価料(Ⅰ)では、賃上げが不十分な医療機関への救済措置として、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」が新設されます。初診又は訪問診療を行った場合8点、再診時は1点となります。点数は8段階に区分されており、最大で初診又は訪問診療を行った場合は64点、再診時は8点です。

 

2.情報通信機器を用いた診療(遠隔診療)の評価

情報通信機を用いた診療については、閉塞性無呼吸症候群に対する持続陽圧呼吸(CPAP)療法を実施する際の基準を踏まえ、「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理」について、情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価(218点)を新設するとしています。

また、「小児特定疾患カウンセリング料」についても、発達障害など児童思春期の精神疾患の支援を充実する観点から、カウンセリングの実態を踏まえて、要件及び評価を見直し、情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価を新設されます。

 

3.医療DXの診療報酬上の評価

医療情報・システム基盤整備体制充実加算については、体制整備に係る評価から、情報取得・活用にかかる評価へ変更され、名称も医療情報取得加算に見直されオンライン資格確認により取得した診療情報および薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DX に対応する体制を確保している場合の評価として、「医療DX推進体制整備加算(8点)」を新設されます。

また2024年6月から居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムが開始予定であり、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスを活用し、質の高い医療を提供することを目的に、在宅医療DX情報活用加算(10点)が新設されます。

 

4.特定疾患療養管理料の変更

特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症及び高血圧を除外することで、生活習慣病管理料に一本化することとなりました。また、この対象疾患の変更は特定疾患処方管理加算(66点から56点に引き下げ)についても同様です。また特定疾患処方管理加算については、特定疾患処方管理加算1(14日以内)は廃止し、特定疾患処方管理加算2(28日以上)の評価を見直され28日超処方以外のリフィル処方箋を発行した場合も算定可能となります。

生活習慣病管理料は、検査等を含む生活習慣病管理料(Ⅰ)と、検査等を含まない生活習慣病管理料(Ⅱ)に区分され、(Ⅰ)は一律40点引き上げられ、(Ⅱ)は333点となりました。算定に当たっての変更点としては、生活習慣病管理料における療養計画書を簡素化し、令和7年から開始予定の電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は血液検査項目の記載を不要になります。また療養計画書について、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに患者の求めに応じて療養計画書の記載事項を入力した場合、療養計画書の作成及び交付をしているとみなします。その他、生活習慣病の診療実態を踏まえ、月に1回以上の総合的な治療管理要件は廃止になります。加算に関しては、血糖自己測定指導加算(500点)、外来データ提出加算(50点)が設けられます。

 

5.短期滞在手術等基本料

短期滞在手術等基本料1(日帰り)は、対象手術は20項目に絞られており、入院外での実施状況を踏まえ評価が見直され約半分の点数となっています。

 

6.処方箋料

2024年度診療報酬改定の改定率は2023年12月の厚労、財務両大臣の折衝で決定、本体改定率は0.88%の引き上げだった一方、「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化」として「マイナス0.25%」が求められ、院外処方の「処方箋料」が引き下げられる。例えば、「3種類以上の抗不安薬、7種類以上の内服薬の投薬などがない場合」の68点は、60点に引き下げとなっています。

 

7.在宅医療

看取り等を行わず訪問診療が多い医療機関は大幅な減算になります。在宅医療は、「在宅時医学総合管理料」及び「施設入居時等医学総合管理料」が従来の3区分から6区分に増え、単一建物診療患者の数が「10 人以上19 人以下」「20 人以上49 人以下」「50 人以上」の場合の評価が新設され、点数も一律引き下げになります。

また、介護保険施設等の入所者の病状の急変時に、介護保険施設等の協力医療機関であって、平時からの連携体制を構築している医療機関の医師が往診を行った場合の評価として介護保険施設等連携往診加算(200点)が新設されます。

 

まとめ

初再診料や処方箋料などベース点数の変更が行われており、多くの診療所にとって影響をもたらす内容となっていますがプラス要素としては、職員の賃上げや医療DXへの対応を進めることです。早めに情報を取得し、シミュレーションなどを行いながら、今後の対応を考えていく必要があります。

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