厚生労働省は12月10日の第15回「新たな地域医療構想等に関する検討会」(で、「医師偏在対策に関するとりまとめ案」を提示、大筋で了承。「外来医師多数区域」での新規開業については、地域で不足している医療機能等の提供要請があった場合に保険医療機関の指定を3年にすることや、経済的インセンティブの財源を保険料から拠出することなどを検討するよう求める内容。第14回会議で示された「新たな地域医療構想に関するとりまとめ案」とともに、検討会は今回で終了となった。
とりまとめ案の主たる対策は「地域の医療機関の支え合いの仕組み」で(1)医師少数勤務区域等での勤務経験を管理者要件に求める医療機関の拡大、(2)外来医師多数区域で、開業前に地域で必要な医療機能の提供を要請された新規開業者の保険医療機関の指定を6年から3年に短縮、(3)保険医療機関の管理者要件に保険医療機関での勤務経験など。2026年度からの施行を予定している。
医師偏在対策に関するとりまとめ案
とりまとめ案では、実効性ある医師偏在対策のための3つの観点として(1)一つの取り組みではなく総合的に実施する、(2)全ての世代の医師にアプローチする、(3)へき地保健医療対策を超えた取り組みを行うことを基本的な考え方として整理。人口減少が進む中で、「保険あってサービスなし」という事態に陥る可能性があるとして、「国、地方自治体、医療関係者、保険者等の全ての関係者が協働して医師偏在対策に取り組むことが重要である」と指摘している。
具体的取り組みは以下の通り
1.医師確保計画の実効性の確保
①「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」の設定。
厚労省が候補区域を提示し、都道府県が地域の実情に応じて選定。2次医療圏単位のみならず市町村単位、地区単位等もある。
【1】各都道府県の医師偏在指標が最も低い二次医療圏
【2】医師少数県の医師少数区域
【3】医師少数区域かつ可住地面積当たりの医師数が少ない二次医療圏(全国下位1/4)のいずれかに該当する区域を提示する。
②「医師偏在是正プラン(仮称)」の策定
都道府県が作成する。国の定めるガイドラインを踏まえ、2026年度に全体を策定する。緊急的な取組を要する事項は先行させる。
2.地域の医療機関の支え合いの仕組み
【1】医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大等
①2020年度から地域医療支援病院の管理者については、医師少数区域等での勤務経験を要件とすることになっているが、対象を拡大する。追加されるのは医療法第31条の公的医療機関(地方公共団体▽国保団体連合会▽済生会▽厚生連▽社会福祉法人北海道社会事業協会)▽国立病院機構▽地域医療機能推進機構▽労働者健康安全機構――の病院。
②対象は2020年度臨床研修を開始した医師を管理者とする。
③勤務期間は現行の「6カ月以上」から「1年以上」に延長。医師少数区域の管理者になる場合は、勤務経験を要件としない。医育期間等での指導機関なども一部認める。
【2】外来医師多数区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等の仕組みの実効性の確保
①外来医師偏在指標が一定数値(例えば標準偏差の数倍)を超える地域(外来医師過多区域)における新規開業希望者に対して、地域で不足している医療機能(夜間や休日等における地域の初期救急医療、在宅医療、公衆衛生等)の提供や医師不足地域での医療の提供(土日の代替医師としての従事等)を要請する。開業後、要請に従わず、都道府県医療審議会での理由等の説明を求めた上で、やむを得ない理由と認められない場合は勧告を行い、勧告に従わない場合は公表を行う。
②要請を受けた外来医師多数区域の新規開業者の保険医療機関の指定については、指定期間を6年でなく3年とする。
③3年後の更新を行う前に、地域医療への貢献等を確認した上で、必要に応じて勧告を行い、保険医療機関の指定を3年より短い期間とすることを可能とする。
まとめ
弊社においても今年に入って特に医師からの開業相談多く寄せられており、その多くは開業制限についての問い合わせ内容となっていますが、今回は強い開業抑制は至らず、健康保険法上の対応に保険医療機関指定の取り消しは盛り込まず施行後5年を目途に見直す方向性となりました。