今回はクリニック開業時のスタッフ人数の設定と対策について述べさせていただきます。クリニック開業時には人件費も増えるし当初はパートタイマーで採用しようかとお考えの先生方も多いのではと思いますが事例を元にスタッフ構成の考え方について順を追ってご説明していきます。
まずパートの割合が多いと引き起こる事例について
開業してちょうど1年が経つ皮膚科クリニックの実例です。開業当初はパートばかり7名のスタッフでスタートでした。
最初の頃は患者数も少なかったためこのスタッフ数で十分やっていけたのですが、3月~9月の繁忙期を迎えると、急に忙しくなり、急遽2名のパートを採用しました。
しかし、繁忙期が終わると患者数も減り、今度は逆にスタッフが余るようになりました。そのときの状況に合わせ、スタッフの勤務日数や勤務時間を減らしたのですが、これでは給与が安定しないと4名のスタッフが退職してしまいました。このような状況では、スタッフが定着せず、患者様からの印象もあまり良くないです。
スタッフの出入りが繰り返されている状況は、決して良い状態ではなく、他のスタッフにも患者様にも悪影響がでてきます。
人件費だけではパートタイマーのスタッフのみ採用するほうが効率的なように感じます。しかしながらスタッフ退職が続き、再採用するとなれば、求人募集経費、面接、採用手続き費用と時間のコストがかかってしまいます。またそれだけでなく、新人スタッフの初期教育にかかるスタッフの時間やコストもかかるなどの問題点もあります。
さらに患者様からは≪このクリニックはいつも人が変わるね≫≪いつもスタッフ募集してるね≫などと患者様からの印象も悪くなります。スタッフも≪自分ばっかり頑張って私も辞めたい≫≪教えてもどうせすぐ辞めちゃうでしょ≫と不満を持ち仕事をしていくようになるため、クリニックに知識やノウハウが蓄積しにくく、クリニックも成長しません。
このようなことを繰り返さないために
パートだけの組織を是正し、常勤スタッフも配置することが大切です。具体的には各部門別に常時何人必要かを算出します。
算出の目安としては、「最高患者数の7割」を前提として考えます。たとえば120人が最高患者数だとすれば、84人の来院患者に対応するためにそれぞれの部門で何人必要かと考えます。常時、受付(診察補助も含む)が4人、看護師が2人の場合、それぞれ常勤1人、パート2 ~3人とすればカバーできます。暇な時期はパートの勤務時間を減らし、忙しい時期は常勤が残業し、かつパートスタッフも勤務時間を増やすことで乗り切るという方法でいけば、80人〜150人くらいまでの患者数なら一定のスタッフ数で診ていくことができます。
パートだけのスタッフ構成では、どうしても強い組織にはなりません。業務責任の所在が曖昧になるため、何か問題が起きても積極的に改善していこうという前向きなスタッフは育成されません。クリニックを良くしていくための取り組みを院長が提案したとしても、それを現場で前向きに実行するスタッフがおらず、否定的に受け止めるスタッフが多くなりがちです。
まとめ
このようにパートタイマーのみ体制は全体としてのまとまりに欠け、簡単に辞めていってしまいます。目先の人件費だけみれば良いかもしれませんが、中長期的に考えれば、スタッフ育成や組織づくりを行うことのほうが大切です。常勤スタッフは、まず現在のパートタイマーのスタッフから選考するという方法があります。もちろんフルタイム勤務が可能な人が対象ですが、それだけでなく能力や人柄も考慮して決めましよう。