クリニック開業において来院する患者数は、診療時間で大きく変動する
新規開業時に意外と意識されていないのが、診療時間の設定です。
クリニックの開業時、診療時間を設定する際に心得ておきたいこと、それは「診療時間=クリニックのイメージ」ということです。 患者が診療を受けたい時にいつもクリニックが閉まっている。診療日数や時間が短い。これはクリニックのイメージダウンにつながります。
患者にとって、クリニックの診療時間が自分の生活スタイルに合っているということが、非常に重要なポイントなのです。 利用者が都合の良い時間帯に診療を行うことができれば、クリニックのイメージアップにつながります。
個人経営のクリニックの一般的な診療時間は、9時から13時、14時から19時というような2部制が多いと思われます。しかし、こうした時間設定をしても、利用者のニーズに合っていなければ患者を獲得することは困難です。
クリニックが診療時間を定める際には、普通はこうだから……という考え方は捨て一般常識にとらわれずに、より多くの患者の利用が見込める時間帯を選ぶことが重要なのです。
“利用する患者の立場に立ってみる”
“地域によって患者層は異なる”
クリニックの診療時間を設定する上で知っておきたいことは、実際にクリニックを利用する患者の層です。ターゲットは地域の住人なのか、他の地域から通勤してくるビジネスマンか、子連れの女性かなど、年齢層や職業によっても利用する曜日や時間帯が異なります。 ビジネス街で土日に診療を行っても利益は見込めませんし、昼間の人通りの少ないベッドタウンで昼間の診療を行っても、利用はあまり見込めません。
競合するクリニックの情報を得る
開業の前に、周辺地域で診療を行っている他のクリニックの情報を入手することも大切です。 特に同じ診療科の施設が何曜日の何時に開業しているのかを、必ず確認するようにしましょう。
情報を得たら、競合相手が診療を行っていない曜日や時間帯に診療を行えるように、診療時間を設定するようにします。これにより、仕事などの都合で他のクリニックに通えない患者が流れて来る可能性が高まります。
診療時間設定の具体例
郊外のニュータウンでは、昼間の時間帯は都市部に仕事に出ている人が多く、一般的と考えられている時間帯に診療を行った場合には、残業などで予約がキャンセルになる可能性があります。そこで、午前中はやや早めの8時30分から11時までの営業とし、集客が望めない昼間の時間帯は診療を行わず、夕方の帰宅時間帯である17時から22時まで、診療時間を後ろにずらすと良いでしょう。また、土曜日も午前中だけではなく、15時から19時くらいまで診療を行うことで、土日に仕事をしている人もクリニックを利用しやすくなります。
過去に開業支援をおこなった内科医院の事例では、近隣に日曜日診療をされている医院が無く、新たに午前中の9時から12時迄診療されることにより、40人以上の患者が来院され、平日の新患数も大幅に増加しました。このように診療時間の設定はとても重要になります。
反対に、ビジネス街で開業する場合には、午前中の早い時間帯や昼休み時間、終業後の利用を見込み、午前は8時から10時、昼は11時から14時、夕方以降は17時から21時と3部に分けて診療を行うことで、利用者のニーズに応えられる可能性が高まります。ビジネス街では休日の集客は望めないため、休診日は土曜日・日曜日ということになります。
診療時間を踏まえ、スタッフの体制を整える
具体例で先述したような診療時間の場合は、スタッフの交代など雇用の形態がやや複雑になります。スタッフの採用の際に不都合があることもあるでしょう。
しかし、利用者が求める曜日や時間帯を無視した診療時間を設定した場合、患者数は伸び悩み、クリニックの経営自体が難しくなります。 利用者のニーズに合致すれば患者数は伸びていきます。人件費を必要以上に抑えようとせずに、利用する患者の視点から、開業する地域の客層に合った診療時間を設定するようにしましょう。 その上で、診療時間に合わせてスタッフを集め、クリニックの体制を構築していきましょう。
まとめ
多くのクリニックでは、競合医院が診療を行っている曜日・時間帯に合わせて診療時間を設定しています。しかし、これでは患者の取り合いになってしまい、患者を分散させてしまいます。また、常識に合わせて設定することで個人クリニックの特定の診療科が同じ曜日に一斉に休業するという事態を招き、受診が必要な患者が総合病院などに流れてしまいます。しかし、もしあなたのクリニックが競合医院の休診日に診療を行っていたとしたら、他のクリニックが獲得し損ねた患者を獲得できる可能性が上がるのです。診療時間を設定する際には、一般的な常識に照らすのではなく、利用する客層の都合に合わせること、また同科目のクリニックが診療を行っていない曜日と時間帯を選ぶことが重要なのです。開業の際には、患者様のニーズを探り、これに合致した選択を行うようにしましょう。