クリニックの新規開業をご検討される際に、開業物件選定時に月額賃料について予算をお考えであられるかと思いますが、経営に必要なランニングコストのうち、月額賃料や月額借入金返済額よりも大きな金額を占めているのが人件費になります。では実際にどのくらいのコストをかけているか、そしてそのコストが適正かどうかをお考えになられたことはあるでしょうか。適正な人件費率やその金額がわからない方が多いのではないでしょうか。
今回は、クリニック経営における適正な人件費率について考えてみたいと思います。
1.人件費率と人件費率の内容
人件費率とは、クリニックの収入のうち、人件費が占めている割合のことです。人件費に含まれるものは、給与や賞与、各種手当のほかに、法定福利費、福利厚生費、通勤定期券などが含まれます。
2.適正な人件費率
クリニックの人件費率の適正値は20%以内です。開業初期は医業収入が少ないため人件費率が当然高くなりますが、人件費率が適正値の範囲内かどうかについてはクリニック経営が安定する2~3年目以降はしっかりと確認する必要があります。
人件費は利益的には低い方がいいのですが、他のクリニックに比べ低くすぎていないかという点も注意しなければいけません。特に2023年以降は働き手不足から、給与相場が上がっており、パートの最低賃金もあがっています。そのような状況も勘案し、必要に応じて従業員の給与なども定期的に見直し、適正な人件費率であるかの確認を定期的にする必要があります。確認を怠ると急にスタッフに転職されてしまい、クリニックの人手不足から患者様への配慮にかけてしまうケースや、待ち時間の増加等、再患の受診率低下を招いてしまう恐れが有ります。
3.人件費をかけることの重要性
低賃金では優秀な人材を集めることは難しく、スタッフのモチベーションアップも難しいです。好条件を提示して優秀な人材が集まれば、クリニック全体の業務が円滑になります。適切な処置で、受付の対応も良いクリニックの場合、患者様からも高評価になります。しっかり人件費を投資しているクリニックは、患者様からの評判が非常に良く安定したクリニック経営が確立されます。また一人ひとりのスタッフが高いモチベーションで仕事に挑めることもクリニックにとって、とても大きなメリットにもなりスタッフに対してより多くの業務を依頼しやすくなります。
4.人件費を変えるタイミング
優秀な人材が集まれば、採用時に提示した条件のままで経営を続けていけばいいかというと、そうではありません。優秀なスタッフにしっかりと働き続けてもらうためには、いかにしてモチベーションを維持させるかについて考えることが重要で必要不可欠です。
人件費を変えるタイミングとしては個人開設から医療法人化のタイミングで、スタッフのクリニックへの貢献度に合わせて、単に定期的な給与アップだけでなく、パートであれば寸志、社員であれば賞与を考慮してあげることが大切です。
また反対に、勤務態度が芳しくないスタッフには、給与をダウンすることや勤務日数についての検討も必要です。この場合には給与を下げるのではなく給与ダウンの理由を伝えること、そして勤務態度の改善に向けて努力してもらうことが望ましいでしょう。
その場合においても勤務態度が改善されなかった場合は、退職勧奨考えなければならないこともあるかと思います。退職勧奨に応じてもらったうえで、優秀なスタッフを補填し安定したクリニック経営を実現させていきましょう。
まとめ
クリニックにおける人件費率は25%を超えると要注意と言われています。しかし整形外科のように多くのスタッフを必要とする標榜科目の場合には25%以下で抑えるのは厳しい面がありますが、30%を超えると利益が出にくくなるので超過しないように心がけ適正なクリニック運営に努めるようにしてください。