厚生労働省が2年に1回公表している医療経済実態調査(医療機関等調査)という統計があります。最新の調査は2017年11月に公表されており医療機関の診療報酬の改定などの基礎資料として使われるもので、一般に注目度が高いものでは有りませんが、これ詳細に見ていくと、医師の平均的な収入の実像が見えます。クリニック開業を検討される際には、頭の片隅に入れた上で事業計画書を作成して頂きたいと思います。
意外なのは、診療科目によって、「儲かる科目」と「あまり儲からない科目」があるという事実です。下図に診療科目別の無床診療所における平均損益差額の違いに示したように眼科が3918万円と圧倒的に高い傾向が伺えます。これは高齢者の白内障手術の増加やスマートフォンの普及による10代を中心に患者数が激増している背景が要因とされます。
消化器系の手術に比べ、眼科クリニックでの白内障の手術は短時間で数をこなせ、その保険点数は、時間のかる消化器系の手術と大差ないと言われており、比較的各種検査点数が他科に比べて高い部分も影響しているように思われます。特に近年は診療報酬点数が抑えられる傾向が有り、クリニック開業時にはより専門性を重視した戦略が必要です。
診療科目 | 損益差額(万円) | 診療科目 | 損益差額(万円) |
内科 | 2432.3 | 皮膚科 | 2792.9 |
耳鼻咽喉科 | 2913.5 | 小児科 | 2928.0 |
整形外科 | 3189.9 | 眼科 | 3918.4 |
勤務医と比較するとはるかに多くの年収を受け取っている開業医ですが、もちろんその裏にあるリスクを忘れることはできません。勤務医は、言えば病院に守られた存在です。
病院として抱える患者の数が激減しない限りは働き続けることができますし、安定した一定の収入を得ることもできます。
しかし、開業医は患者を逃してしまえば、それが収入へと直結してしまいます。
最近ではSNSの影響により、少しでも悪い噂が広まれば集患は望めなくなる時代でありリスクマネジメントが必要です。
勤務医に比べ開業医の年収高い原因は、勤務医に比べリスクに向き合うことを選択したため、年収が高いと言えるのではないでしょうか。
まとめ
開業のメリットばかりに気を取られることなく、デメリットにも目を向けながら決意を固め、準備を進めていきましょう。